APPI — Act on the Protection of Personal Information
2026年7月10日 参議院本会議で可決・成立

図解:令和8年 改正個人情報保護法
「AI開発に係る特例(統計作成等の特例)」

正式名称:個人情報の保護に関する法律(APPI)の一部を改正する法律

改正の核心は、AI開発・統計作成(Statistical Purposes)なら本人同意なしに個人データを使える特例。何が変わるのかのBefore/After、特例のスキームと4つのガード、本当の射程(効く用途・効かない用途)、なぜ生データが要るのか、賛否の対立軸、日・米・欧・中の比較、実務アクションまで——図解と読み物を一体化して、この1枚に全体像を収める。

OVERVIEW / 30-SECOND SUMMARY

まず30秒で全体像The Big Picture

「規制緩和(アクセル)」と「執行強化(ブレーキ)」を同時に積んだ改正です。

成立日
2026.7.10
Enacted
参議院本会議で可決(衆院通過時に付帯決議)
施行期限
公布後2年以内
Effective by 2028
2028年頃までに政令で施行日を指定
目玉の緩和
統計作成等の特例
Statistical Purposes Exception
AI開発・統計目的の第三者提供は本人同意不要に(改正法30条の2)
同時に強化
課徴金・罰則
Surcharge & Penalties
悪質な違反への課徴金制度・不正取得罪の新設
SECTION 01 / WHAT CHANGED

改正の主役は「AI開発なら同意不要」という特例

3年ごと見直しに基づく大規模改正。柱のうち、AX(AI変革)に最も効くのが同意規制の緩和だ。

2026.04.07閣議決定 2026.06衆院通過(統計特例に付帯決議) 2026.07.10参院で可決・成立 〜2028全面施行の見込み(公布から2年以内)

核心は、統計作成等(AI開発を含む)に限って、本人同意なしに個人データを使える特例(改正法30条の2)だ。まず前提になる3つの言葉を押さえておきたい。

用語個人情報Personal Information

生存する個人に関する情報で、氏名や生年月日・住所等の記述、または個人識別符号によって特定の個人を識別できるもの。利用や提供には原則として本人同意が必要になる。

用語第三者提供Third-Party Provision

個人データを本人以外の第三者に渡すこと。原則は本人同意が必要。届出を前提に同意なしで渡す「オプトアウト提供(Opt-out)」の例外があるが、要配慮個人情報はその対象外。

用語要配慮個人情報Special Care-Required Personal Information

人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪歴・犯罪被害など、不当な差別や偏見が生じないよう取扱いに特に配慮を要する情報。取得と第三者提供に原則同意が必要で、今回の特例が「同意なし取得」を認めて議論を呼んだのがこの類型。なお氏名・住所はこれには当たらない。

PILLAR 01

AI開発・統計作成の特例Statistical Purposes Exception

統計作成等(AI開発を含む)に限れば、本人同意なしに個人データの第三者提供や、公開された要配慮個人情報の取得が可能に。利用目的による制限・第三者提供の同意原則を緩和する。

PILLAR 02

課徴金制度の新設Administrative Surcharge

不適正利用・不正取得・違法な第三者提供・統計特例違反のうち、大規模(本人1,000人が基準)で悪質な違反に、違反で得た財産上の利益相当額を課す。個情法で初の金銭制裁。

PILLAR 03

顔特徴データ等の規律Facial Feature Data

顔特徴データ等について、取扱いに関する一定の事項の周知を義務化。利用停止等請求の要件を緩和し、届出による同意なしの第三者提供(オプトアウト提供)を禁止する。

PILLAR 04

こどもの保護強化Protection of Minors

16歳未満の個人情報は原則、法定代理人の同意を要するなど、未成年に対する保護を上乗せする。事業者には「こどもの最善の利益」を考慮する責務も明文化された。

PILLAR 05

執行強化(罰則・緊急命令)Enforcement

データベース不正提供罪に加害目的類型を追加し、詐欺・不正アクセスによる不正取得罪を新設。権利利益の侵害が切迫する場面では、従来必要だった勧告を経ずに個人情報保護委員会が直ちに命令を出せる「緊急命令」も導入される。

PILLAR 06

実務まわりの整理Operational Rules

委託範囲外のデータ取扱いの禁止を明文化し、既存の委託契約の見直しを促す。漏えい通知は権利利益保護に支障がない場合の代替措置を許容。単体では個人情報でない連絡可能なメールアドレス等(個人関連情報)への不正利用・不正取得の禁止、医療機関の学術研究例外への位置づけの明確化も入った。

※ この「AI開発を含む」が実際に何を指すのかは、拡大解釈が起きやすい最重要ポイント。SECTION 03 で切り分ける。本資料は解説目的の整理であり、法的助言ではありません。
SECTION 02 / BEFORE AND AFTER

何が変わるのか——「同意の壁」に特例の門が開く

従来は「本人同意(Consent)」が原則の壁だった。改正後は、AI開発・統計作成に限って壁を迂回する"特例ルート"が新設される。データの流れで見るとこうなる。

BEFORE同意が原則の壁
本人(顧客・患者・利用者)
▼ 同意して提供
A社(データを保有する事業者)
第三者提供には本人同意が原則必要例外は匿名加工情報・仮名加工情報・オプトアウト等の限定ルートのみ
B社のAI開発には事実上使いにくい大量データの同意取り直しは非現実的——日本のAI開発の足かせと指摘されてきた
AFTER特例ルートの新設
本人 個別の同意は不要に
▼ 取得済みデータ
A社(提供元)
統計作成等の特例(改正法30条の2)Statistical Purposes Exception — 公表+書面合意+目的拘束などの条件を満たせば通過できる
B社(提供先):AIモデルの学習・統計情報の作成に利用可成果物は「特定の個人に関する情報でないもの」に限定
SECTION 03 / TRUE SCOPE

特例の"本当の射程"——効くのはどこまでか

特例の背骨は、条文の定義にある一本の縛り——成果物が「個人に関する情報」であってはならない。この一線で、何に効いて何に効かないかがきれいに分かれる。

大原則成果物が「個人に関する情報」であってはならないOutput must not identify individuals — これが特例の一本の背骨。出力が"個人"か"集計"かで扱いが決まる。
本命 / FITS

統計・機械学習Statistics & Machine Learning

傾向・集計・汎用モデルを作る用途。出力が特定の個人にならないので、特例に素直に乗る。今回の緩和が本当に効く中心はここ。

需要予測異常検知傾向分析分類モデル
グレーゾーン / UNSETTLED

LLM(生成AI)の事前学習LLM Pre-training

生成モデルは学習データを断片的に吐き出す(regurgitation)ため、「個人が出ない」と言い切りにくい。どこまで含むかは委員会規則・ガイドライン待ちで、まだ未確定。

事前学習ファインチューニングRAG評価データ作成
想定外 / OUT

個人単位の出力Individual-Level Output

統計的な手法を使っていても、成果物が個人に関する情報ならこの特例の外。統計の名を借りたプロファイリング(Profiling)は通らない。

個人スコア属性推定信用力疾病リスク採否可能性

この線引きを、実務の場面に落とすとこうなる。

特例ルートでできる(例)Permitted

  • 複数社の購買履歴を持ち寄り、需要予測AIの学習データにする
  • 複数チェーンの来店客データを突合し、横断的な傾向分析AIを開発する(成果物は統計情報)
  • 医療データを集めて疾患予測モデル・創薬AIの研究開発に使う
  • 行政機関へ統計作成目的でデータを提供する

特例ルートではできない(例)Not Permitted

  • 受け取ったデータで個人ごとの信用スコアを算出する
  • 特定個人へのターゲティング広告・営業リスト作成に使う
  • 採用選考・与信・保険引受など個人への評価・決定に使う
  • 提供先がさらに別の会社へ再提供する(原則禁止)/公表や書面合意なしにこっそり提供する(要件を満たさず違法)
SECTION 04 / SCHEME AND SAFEGUARDS

特例のスキームと、同意の代わりの「4つのガード」

誰から誰へ、何を条件に渡せるのか。特例の担保はオプトアウトではなく、公表・書面合意・目的外利用の禁止による。

提供元 / PROVIDER
個人情報取扱事業者Business Operator Handling Personal Information
顧客データ・購買履歴・診療データ等を保有
本人同意なしで提供可
個人データ(要配慮を含み得る)
提供先 / RECIPIENT
個人情報取扱事業者/行政機関の長等Business Operators / Heads of Administrative Organs
AIモデル学習・統計情報の作成に利用(個人への評価・決定は不可)
用語個人情報保護委員会(PPC)Personal Information Protection Commission

個人情報保護法を所管する独立監督機関。ガイドラインの策定、事業者への監督・指導、そして今回新設された課徴金など、執行の主体。改正の実務ルールは、今後このPPCの政令・ガイドラインで具体化される。

GUARD 01

利用目的の限定Purpose Limitation

使途は統計作成等に限定し、個人が特定される結果は出さないことが前提。提供先も民間の個人情報取扱事業者か行政機関等に限られる。

GUARD 02

事前公表Prior Disclosure

提供元・提供先の両社が、社名と実施する統計作成等の内容を、ウェブ等の見やすい場所で事前に公表する義務を負う。

GUARD 03

書面契約Written Agreement

「統計情報等の作成」のみを目的とする提供である旨を、提供元・提供先間で書面により合意することが必須。受け取り側の目的外流用は直接の法令違反となる。

GUARD 04

目的外利用の禁止+課徴金Use Limitation & Surcharge

取得者・提供先は統計作成等以外の目的外利用と第三者提供が禁止。これに反した「統計特例違反」は課徴金の対象になる(大規模・悪質な違反が対象)。提供先にも安全管理措置など通常の個人情報保護義務がフルに適用される。

ただし、次世代医療基盤法のような認定・審査を挟まないため、事前公表を本人が実際に認知できるか、書面合意や目的外利用禁止の実効性を誰が監督するのか、といった実務上の穴は残る。
SECTION 05 / USE CASES

○に乗せて、これまで作りづらかったモデルが動き出す

同意の壁やデータの分断で止まっていた"個人を出力しない"モデルが、具体的にこう作りやすくなる(個人スコアや属性推定のような個人単位の出力は、統計手法でも対象外)。

医療 / HEALTHCARE

重症化・早期発見の予測

従来:複数病院の症例と病歴(要配慮)が要るのに、市中病院は学術研究例外に依拠できず、同意の壁で症例が集まらなかった。
特例で:病院を学術研究機関等に含め、公開情報の要配慮取得も可能に。希少症例を削らず横断学習でき、精度を上げやすい。
必要な項目例年齢・性別・身長・体重・血圧・血液検査値・診断名・病歴・服薬歴・検査日時(同一人物の時系列で紐づけ)
創薬・治験 / PHARMA

候補探索と患者層の傾向解析

従来:希少疾患名や特異な検査値は匿名加工で真っ先に削られ、レアケースを学習できなかった。
特例で:粒度を保った生データで傾向を解析でき、治験対象の絞り込みや副作用シグナルの検知に使いやすい。
必要な項目例年齢・性別・診断名(希少疾患名を含む)・遺伝子/バイオマーカー・検査値(特異値を含む)・投薬内容・副作用の有無・転帰
金融 / FINANCE

不正・マネロン検知(異常検知)

従来:単一機関のデータだけでは検知力が頭打ち。複数機関の突合は本人同意・委託の整理で難しかった。
特例で:横断データで異常検知(Anomaly Detection)モデルを作れる。※個人ごとの信用スコア作成は対象外、検知=集計モデルは○。
必要な項目例取引日時・金額・送金元/送金先・口座ID・取引種別・端末/IP等のメタ情報・取引履歴(時系列パターンが主。氏名そのものより挙動が効く)
小売・製造 / RETAIL

需要予測とサプライチェーン最適化

従来:複数事業者の購買・在庫データを跨ぐ学習が、提供の壁で進みにくかった。
特例で:横断データで需要予測・在庫最適化・不良検知など、個人を出力しないモデルを構築しやすい。
必要な項目例購買日時・商品カテゴリ・数量・価格・店舗/地域・在庫データ・顧客ID単位の購買履歴(会員属性:年代・性別)
モビリティ・都市 / MOBILITY

交通需要・防災リスクの予測

従来:位置情報(準識別子)を含むデータを跨ぐ解析が難しかった。
特例で:交通需要予測、渋滞・事故リスクの傾向分析、インフラ異常検知など、集計出力のモデルが作りやすい。
必要な項目例位置情報(GPS/基地局)・時刻・移動経路・交通手段・端末ID・気象/センサーデータ(同一端末の移動を時系列で紐づけ)
横断連携 / CROSS-SECTOR

複数事業者データの統計モデル

従来:A社・B社のデータを本人ごとに突合して統計を作ることは、委託の整理では難しかった(PPC Q&A)。
特例で:統計作成等目的に限り、横断的なデータ連携で傾向・汎用モデルを作れる名寄せの選択肢が開いた。特例が本命とする領域。
必要な項目例各社の顧客ID・属性(年代・性別・地域)・行動/購買/利用履歴(本人ごとに突合される共通キー+時系列)
共通点は「バラバラの事業者・機関にまたがるデータを、同意を個別に取らずに横断学習できる」こと。逆に「統計作成等」にAIの機械学習・ファインチューニング・RAG・評価データ作成のどこまで含まれるかは条文だけでは確定しておらず、委員会規則・ガイドライン・Q&Aで外縁が固まっていく領域だ。
SECTION 06 / WHY RAW DATA

なぜ"生データ"でなければならないのか

匿名加工情報という既存ルートがあるのに、なぜ特例が要るのか。加工は安全と引き換えに、AI学習にとって致命的な3つの劣化を起こす。

1

信号がぼやけるSignal Loss

AIは細かい相関から学ぶ。属性をバケツに丸めると、本来学ばせたいパターンそのものが消える。

2

縦のつながりが切れるBroken Longitudinal Links

匿名加工は「同一人物と分からなくする」処理。同じ人の時系列(診断→手術→転帰)を意図的にバラすため、longitudinalな構造が失われる。

3

レアケースが真っ先に消えるEdge Cases Deleted First

特異値・希少疾患の除去は、モデルに最も学ばせたいエッジケースの削除でもある。非構造テキストでは文脈から特定できるため「名前だけ置換」はほぼ機能しない。

OK
ONE POINT

AIが本当に欲しいのは「名前」そのものではなく、加工で失われる粒度・紐付け・レアケースだ。名前の文字列はむしろ無情報なことも多い。だから「加工すると有用性が落ちる」までは共有された感覚だが、「実名・住所という記述が絶対必要」かは用途次第。ここを混同すると議論がずれる。

この議論の前提になるのが、加工情報の分類だ。「個人情報 ⊃ 個人データ ⊃ 保有個人データ」という入れ子と合わせて押さえる。

用語個人データ/保有個人データPersonal Data / Retained Personal Data

「個人データ」は、個人情報をデータベース化したもの。第三者提供規制などの対象になる。さらに事業者が開示・訂正・削除の権限を持つものが「保有個人データ」で、本人の開示請求権等が及ぶ。個人情報 ⊃ 個人データ ⊃ 保有個人データ という入れ子の関係にある。

RAW

個人情報Personal Information

特定の個人を識別できる情報(氏名・住所等を含む)。利用・第三者提供に原則同意が必要。今回の特例が「生データのまま」使えるようにしたのがこの類型。

PSEUDONYMIZED

仮名加工情報Pseudonymized Information

他の情報と照合しない限り個人を特定できないよう加工。氏名等は削るが、特異値や希少疾患名の削除は不要。対応表が残りうるため復元の余地があり、原則として第三者提供は禁止(主に社内利用向け)。

ANONYMIZED

匿名加工情報Anonymized Information

特定の個人を識別できず、かつ復元もできないように加工。特異値・希少値の削除まで求められる厳しい基準。その代わり本人同意なしで第三者提供が可能。

RELATED

個人関連情報Personally Related Information

Cookieや閲覧履歴など、単体では個人を特定しないが個人に関連する情報。提供先で個人データになることが想定される場合に、同意取得の確認が必要になる。改正では連絡可能なものへの不正利用・不正取得禁止も加わった。

SECTION 07 / CONTROVERSY AND OPEN ISSUES

賛否はどこで割れたのか——そして残る課題

国会審議で最も割れたのは、病歴・犯罪歴を含む要配慮個人情報まで特例の対象になり得る点だ。「解禁」と「懸念」はセットで語られてはじめて正確になる。

推進側の論理 / PRO

データがなければAI競争に勝てない

米国・中国に後れを取る国内AI開発の競争力を高めるには、大量・多様な実データが不可欠。特例の成果物は「特定の個人に関する情報でない」ことが要件で、公表・書面合意・目的拘束の担保もある——という整理。

賛成:自民党・日本維新の会・国民民主党 ほか
懸念側の論理 / CON

本人の知らないところで機微情報が流れる

病歴犯罪歴人種信条障害

要配慮個人情報が本人の知らないところで外部提供され得る。提供時の氏名匿名化義務がない点、公表ベースの透明性で本人が実際に気づけるのかという点への批判が強く、医療関係者からは「改悪」として廃案を求める声も上がった。

反対:立憲民主党・公明党・参政党・共産党 ほか/衆院通過時に付帯決議

「個人情報保護法が改正されて、生成AIの学習データが自由になった」——この一行の要約が、いちばん危ない。今回の特例が素直に効くのは、需要予測や異常検知のような"個人を出力しない"統計・機械学習だ。LLMの事前学習に生データを流す話は「成果物が個人であってはならない」要件と吐き出し問題に正面からぶつかる。AIと一括りにした瞬間、議論はほぼ必ず混線する。

残る課題 01 / OPEN ISSUE

法案が「AI」を抽象的に使いすぎている

条文も報道も「AI開発」とひとくくりにするため、「ChatGPTのような生成AIに自分の情報が学習されてしまうのでは」という誤解が広がりやすい。実際に効く中心は"個人を出力しない"統計・機械学習であり、LLMの事前学習は未確定——この線引きを制度側も発信側も明示しないと、不信だけが独り歩きしてしまう。用語の解像度を上げることが、そのまま信頼の設計になる。

残る課題 02 / OPEN ISSUE

「公表すれば足りる」透明性に、本人は気づけるのか

特例の担保は事前公表と書面合意であり、本人への個別通知や氏名の匿名化義務はない。病歴・犯罪歴を含む要配慮個人情報まで対象になり得るだけに、本人が提供の事実を現実に認知できる導線をどう作るかは、施行までに残された宿題だ。

残る課題 03 / OPEN ISSUE

実務の細部は、これからの規則・ガイドライン次第

「権利利益を害するおそれが少ない行為」の範囲、公表事項の粒度、LLM学習の扱い——特例の使い勝手を決める要素はほぼすべてPPCの政令・委員会規則・ガイドラインに委ねられている。2028年頃の全面施行に向けて、パブリックコメントを含む規則整備の定点観測が、実務側の必須動作になる。

SECTION 08 / GLOBAL COMPARISON

日・米・欧・中で、AIへのデータの"入口"はこう違う

同じ「AI学習にどう個人データを使わせるか」でも、根っこの発想が国ごとに違う。日本の特例は、この地図のどこに置かれるのか。

EU

EU:権利ベースで世界最厳

GDPR(EU一般データ保護規則)の下、処理には同意等の「適法根拠(Legal Basis)」が必須。EDPBは2024年12月、AI学習に「正当な利益(Legitimate Interest)」を根拠にできると認めたが、3ステップ審査で厳格に絞る。2026年のガイドラインは公開データのスクレイピングにもGDPRを適用し、事前のデータ最小化と厳格な匿名化を要求する。

USA

米国:オプトアウト基調で最も緩い

連邦の包括的プライバシー法は不在。HIPAA(医療)等の分野別法+州法の寄せ集めで、2026年時点で20を超える州が包括法を制定。多くはオプトアウト型(Opt-out=拒否権)で、既定ではAI学習に使いやすい。最先はカリフォルニア(CCPA/CPRA、専門機関CPPA、自動意思決定ADMT規則が2026年1月施行)。

CHINA

中国:同意原則+国家主導の統制

個人情報保護法(PIPL)は同意原則で例外が狭く、越境移転には安全評価等の厳しい統制がかかる。一方で生成AIサービス管理暫定弁法などにより、国家がAI開発を政策的に主導。企業への規律は重いが、公共・国家目的のデータ利活用は進みやすいという非対称が特徴だ。

SECTION 09 / ROADMAP AND ACTION

いつから効くのか、それまでに何をするのか

特例は「使える会社」と「使えない会社」をくっきり分ける。分水嶺は、データの棚卸しと契約の整理を施行前に済ませているかどうかだ。

2026年4月7日
改正案を閣議決定・国会提出
2026年6月
衆議院通過(統計特例に付帯決議、新設罰則には異論も)
2026年7月10日
参議院本会議で可決・成立
2026〜2027年
PPCが政令・委員会規則を整備(「権利利益を害するおそれが少ない行為」の具体化、公表事項の詳細、LLM学習の扱いなど)——実務の細部はここで決まる
〜2028年頃
公布から2年以内に政令で定める日に全面施行(2028年7月17日が期限)