聖書 / 超図解

66巻が語るひとつの物語と、
それが一冊になるまで

聖書で一番大切なものは何か、そして66巻はどうやって一冊になったのか。本ページの節数・語の密度・引用は、記憶ではなく手元のコーパス(口語訳1955・文語訳=いずれもパブリックドメイン)から実際に数え、引いたものです。

2026-09-08 / 66巻・1,189章・31,084節を実測 / 日英切替

数字で見る聖書BY THE NUMBERS

中身に入る前に、規模だけ先に。数字はすべてコーパスの実数(断りのない限り口語訳1955)。

巻数
66
旧約39巻+新約27巻
章
1,189
旧約929章+新約260章
節
31,084
旧約23,131節+新約7,953節(文語訳は31,099)
文字数
176万字
口語訳の本文のみ(文語訳は142万字)
最長・最短
2,451/13節
詩篇2,451節/ヨハネの第二の手紙13節
66巻の外側
24文書
第二正典・外典をラテン語・英語・ギリシャ語で収集
△ 「約40人の書き手が約1500年かけて」は伝統的な見積りで、実測値ではありません。成立年代は学説によって幅があり、未確定として扱います。

一番大切なメッセージ:四幕でつながる一つの物語THE CORE MESSAGE / 私の読み

私の読みでは、一番大切なのは個々の教えではなく、ひとつの物語が一貫していること——壊れた関係を、神が契約という形で回復し続ける筋が、多数の書き手の66巻を貫いていることです。各幕をクリックしてください。(枠組み:biblical theology で標準的な「創造→破れ→契約→回復」の四幕)

第一幕 創造:関係が与えられる

  • 物語は規則ではなく、「はなはだ良かった」と宣言される世界と、神と人との関係から始まる。
  • 後のすべては、この出発点——何が完全で、何が壊れるか——を基準に測られる。
  • 該当:創世記1〜2章。
創世記 1:1(口語訳)はじめに神は天と地とを創造された。文語訳:元始に神天地を創造たまへり
創世記 1:31(口語訳)神が造ったすべての物を見られたところ、それは、はなはだ良かった。夕となり、また朝となった。第六日である。
結論を1行で:聖書は規則集ではなく関係の履歴である。1,000年以上分の履歴を残すのは、「神は愛である」(ヨハネの第一の手紙4:8)という主張を、実際に起きたことと照らして検証できるようにするため。新約は「書いてある」等の定型で旧約を約80回引き、「約束どおりになった」と繰り返す。

契約の連鎖CHAIN OF COVENANTS

第三幕は一度きりではなく、8つの連鎖です。契約のたびに輪が広がり——全被造物、一家族、一民族、一人の王、すべての人、そして内に住む聖霊へ——いずれも神の側から一方的に始まる。章節はコーパスで照合済み。

1創造全被造物と

「生めよ、ふえよ、地に満ちよ、地を従わせよ」——始まりに与えられた祝福と委託。一本の木だけが条件。

創世記 1:28・2:16–17
2アダム破れの直後に

堕落直後の最初の約束——「女のすえ」が蛇のかしらを砕く(原福音)。神自ら皮の着物を着せる。

創世記 3:15・3:21
3ノア全地と

「わたしはあなたと契約を結ぼう」。虹をしるしに「二度と滅ぼさない」。

創世記 6:18・9:9–13
4アブラハム一家族と

「地のすべてのやからは、あなたによって祝福される」——広がるための永遠の契約。

創世記 12:2–3・15:18・17:7
5モーセ(シナイ)一民族と

「あなたがたはわたしの宝となる」。「契約の血」で結ばれる。律法はこの関係の形。

出エジプト記 19:5・24:8
6ダビデ一人の王と

「あなたの位は長く堅うせられる」——来るべき王への希望の根。

サムエル記下 7:16・詩篇 89:3
7イエス・キリスト(新しい契約)すべての人・心に記される

エレミヤが予告し、イエスが最後の晩餐で「わたしの血で立てられる新しい契約」と宣言、ヘブル書が「仲保者」として説く。

エレミヤ書 31:33・ルカ 22:20・ヘブル 9:15
8聖霊(ペンテコステ・キリストの花嫁)内に住む / 婚約の契約

「わが霊をすべての肉なる者に注ぐ」——ヨエル・エゼキエルが予告し、ペンテコステで成就。ホセアの「永遠にあなたとちぎりを結ぶ」が、パウロの「キリストに婚約させた」、黙示録の「小羊の婚姻」へ。

ヨエル 2:28→使徒 2:17・エゼキエル 36:26–27・ホセア 2:19–20・IIコリント 11:2・黙示録 19:7・21:2・22:17
◎ 方向に注目:どの契約も神の側から始まる。だから聖書はこれを「契約(一方的に自らを縛る約束)」と呼び、「取引(交渉による交換)」とは呼ばない。最後の環で場所が変わる——律法は石に、新しい契約は心に書かれ、聖霊がそれを書く者。
△ 正直な注記:創世記1〜3章とペンテコステの記事に「契約」という語は出てきません。創造・アダム・聖霊を契約として数えるのは、契約神学・花嫁神学という枠組み(読み)によるもので、本文の語彙そのものではありません。アダム契約の根拠にされるホセア6:7(「アダムのように契約を破った」と読む解釈)も、解釈が分かれます。

言葉の密度:旧約と新約コーパスで実測

各語を含む節の割合(口語訳1955)。生の件数ではなく密度で見ます——旧約は新約の2.9倍の節数があり、件数では誤読するため。

旧約(23,131節)新約(7,953節)
信
0.67%
7.10%
愛
1.08%
3.66%
罪
3.15%
3.73%
救
2.21%
2.44%
契約
1.17%
0.40%
棒が語ること:問題(罪)は両約で一定、枠組み(契約)は旧約に属し、応答(信・愛)は新約に集中する。同じ物語の、後の幕。

方法:節本文の部分一致。「信」は信じる・信仰・信頼などを含む。棒の長さは線形(0〜8%)。

同じ5語をヘブライ語で旧約:レニングラード写本(WLC) / 新約:デリッチ訳ヘブライ語新約

旧約 ヘブライ語原典(23,213節)新約 ヘブライ語訳(7,956節)
אמן 信
0.70%
5.77%
אהב 愛
1.02%
3.24%
חטא 罪
2.04%
2.71%
ישע 救
1.72%
1.77%
ברית 契約
1.17%
0.45%

方法:母音記号・アクセント(U+0591〜05C7)は照合時のみ除去。パターン:אהב/ברית/חטא/ישע・ושיע・ישועה・תשועה(ישוע 単独=人名イエスは除外)/אמן・אמין・אמונה。新約側はデリッチ訳(1885、2003年版)という翻訳なので、訳者の語選択を反映します。

同じ5語をギリシャ語で旧約:七十人訳(Rahlfs) / 新約:ネストレ1904

旧約 ギリシャ語訳・七十人訳(22,984節)新約 ギリシャ語原典(7,942節)
πιστ- 信
2.55%
7.73%
ἀγαπ- 愛
0.61%
2.98%
ἁμαρτ- 罪
2.46%
2.93%
σῴζω 救
3.35%
3.15%
διαθήκη 契約
1.23%
0.38%

方法:NFD正規化・アクセント除去・小文字化・語末シグマ統一。パターン:αγαπ/διαθηκ/αμαρτ/σωζ・σωσ・σωθ・σωτηρ/πιστ。こちらは旧約側が翻訳(七十人訳)、新約側が原典——ヘブライ語チャートと鏡像の関係です。

3言語で同じ形が出る:「契約」は3言語とも旧約に偏り(2.6〜3.2倍)、「信」「愛」は3言語とも新約に偏る(信 3.0〜10.6倍、愛 3.2〜4.9倍)、「罪」はほぼ平ら。つまりこの型は日本語訳の癖ではない。違いが出た一点:ギリシャ語の「救」(σῴζω/σωτηρία)は七十人訳ですでに多い——この語が「救出・安全」一般も指すため。

66巻が一冊になるまで成立史 / 正典化

聖書は一冊の本として書かれたのではなく、何世紀もかけて一冊として認められたもの。暗黙に、のちに明示的に使われた基準は「その文書がひとつの物語に合うか」でした。時代で絞り込めます。

年表が示すこと:新約の一覧は2世紀末には事実上固まり、367年に正確に書き留められた。1546〜1647年まで続いた議論は、七十人訳が運んだ旧約の追加の書だけをめぐるもの。66巻と73巻の違いは、そこにしかない。

正典の違い:66巻・73巻・49巻+操作できます / 伝統を選ぶ

新約27巻はどの伝統でも同じ。伝統を選ぶと、旧約側でどの書を正典に数えるかが変わります。✓=正典、△=読むが教理の根拠にはしない(外典)、打消し線=含めない。

旧約——全伝統で共通(39)

39巻の外側——伝統によって扱いが分かれる書

◎ なぜ分かれたか:ヘブライ語圏のユダヤ教は短い一覧を、ギリシャ語圏のユダヤ教(と七十人訳を読んだ初代教会)は長い一覧を使った。ヒエロニムスはヘブライ語側、アウグスティヌスはギリシャ語側を支持。宗教改革が問いを再開し、トリエントがカトリック側で閉じた。
△ エステル記とダニエル書にはより長いギリシャ語版があり、カトリック聖書は補遺を本体に組み込んで印刷する。だからカトリックの旧約は39+12でなく46巻と数える。

同じ39巻、違う並び:ユダヤ教のタナハとキリスト教の旧約操作できます / ボタンで並べ替え

ユダヤ教の聖書(タナハ)は、プロテスタントの旧約と同じ文書を含みますが、トーラー・ネビイーム・ケトゥヴィーム(T・N・K)の3部・24巻として、違う順に並べます。ボタンを押すと39巻が並び替わります。

キリスト教の旧約 — 39巻・4区分

律法(5)

  1. 創世記
  2. 出エジプト記
  3. レビ記
  4. 民数記
  5. 申命記

歴史(12)

  1. ヨシュア記
  2. 士師記
  3. ルツ記
  4. サムエル記上・下
  5. 列王紀上・下
  6. 歴代志上・下
  7. エズラ記
  8. ネヘミヤ記
  9. エステル記

詩歌・知恵(5)

  1. ヨブ記
  2. 詩篇
  3. 箴言
  4. 伝道の書
  5. 雅歌

預言(17)

  1. イザヤ書
  2. エレミヤ書
  3. 哀歌
  4. エゼキエル書
  5. ダニエル書
  6. ホセア書〜マラキ書(十二小預言書)

マラキ書で終わる:「わたしは預言者エリヤをあなたがたにつかわす」——次を待つ終わり方。

ユダヤ教のタナハ — 24巻・3部

トーラー(律法)5

  1. 創世記
  2. 出エジプト記
  3. レビ記
  4. 民数記
  5. 申命記

ネビイーム(預言者)8

  1. ヨシュア記
  2. 士師記
  3. サムエル記(1巻)
  4. 列王記(1巻)
  5. イザヤ書
  6. エレミヤ書
  7. エゼキエル書
  8. 十二預言者(1巻)

ケトゥヴィーム(諸書)11

  1. 詩篇
  2. 箴言
  3. ヨブ記
  4. 雅歌・ルツ記・哀歌・伝道の書・エステル記(五つの巻物=メギロート)
  5. ダニエル書
  6. エズラ=ネヘミヤ記(1巻)
  7. 歴代誌(1巻)

歴代誌で終わる:クロス王の「上って行きなさい」——帰還と再建で閉じる終わり方。

◎ なぜ大事か:並びが読み方を変える。キリスト教の旧約は預言(マラキのエリヤ)で終わり福音書へ手渡す。タナハは歴代誌(クロスの勅令、歴代志下36:23)で終わり、帰郷で閉じる。ダニエル書・ルツ記・哀歌は「預言者」でなく「諸書」に入る。イエスの「義人アベルの血から…ザカリヤの血に至るまで」(マタイ23:35)は創世記から歴代誌までを指す=タナハの順序が前提、と読まれることが多い(解釈であって証明ではない)。
△ 写本の実順は印刷版と違う。本コーパスのレニングラード写本(WLC、現代ヘブライ語聖書の底本)では諸書が「歴代誌→詩篇→ヨブ→箴言→ルツ→雅歌→伝道→哀歌→エステル→ダニエル→エズラ→ネヘミヤ」の順で、歴代誌は末尾でなく先頭。印刷版タナハは上に示したタルムード由来の順に従う。

成立年代:定説の範囲と、学説の一覧DATING / 学説

年表で「未確定」とした部分を開きます。第1表=批判的学界で広く共有される推定範囲(英語版Wikipedia「Dating the Bible」の整理、2026-09-08参照)。第2表=それを支える/争う主な学説。すべて学説であり、本ページはどれかを正解と断定しません。

1. 区分ごとの定説的な推定範囲

区分推定年代備考
律法(五書)現在の形は捕囚後(前5世紀頃)、最終形は遅くとも前250年頃素材はもっと古い(学説参照)
申命記史書(ヨシュア〜列王)初版:ヨシヤ王期(前7世紀末)/完成:捕囚期(前6世紀)ノート1943、のち二段階編集説
イザヤ書1〜39章:前8世紀末〜前7世紀初/40〜55章:捕囚中期/56〜66章:帰還直後三イザヤ説
エレミヤ書/エゼキエル書エレミヤ:ギリシア語版はペルシア前期、ヘブライ語版は前2世紀までに/エゼキエル:前593〜571年の預言エレミヤ書は二つの本文形
十二小預言書アモス・ホセア:前8世紀/ナホム・ハバクク・ゼパニヤ:前7世紀末/ハガイ・ゼカリヤ1〜8:前520年頃/マラキ:前5世紀/ゼカリヤ9〜14:前5〜4世紀オバデヤ・ヨエル・ヨナは議論あり
詩篇前3分の2は捕囚前中心、後3分の1は捕囚後中心。編纂はヘレニズム期まで続く
箴言/ヨブ記/伝道の書箴言:千年以上の集成で年代決定不能/ヨブ:前6〜4世紀/伝道の書:前450〜180年
ルツ記/エステル記/哀歌ルツ:ペルシア期/エステル:前4〜3世紀/哀歌:前586年以後
ダニエル書前168〜164年(最終形)マカバイ戦争期
歴代志/エズラ・ネヘミヤ歴代志:前400〜250年(有力:前350〜300)/エズラ・ネヘミヤ:前300〜200年に最終形
パウロ書簡(真正7通)48〜58年頃(Iテサロニケ51、ローマ57〜58)最古の新約文書
福音書・使徒行伝マルコ65〜73/マタイ・ルカ80〜90/ヨハネ90〜100/使徒80〜90
その他の書簡・黙示録エペソ80〜90/牧会書簡100頃/ヘブル80〜90/ヤコブ65〜85/Iペテロ75〜90/ヨハネ書簡90〜110/黙示録95頃/IIペテロ110頃(最後)

2. 数字を支える/争う学説

学説提唱者・年主張位置づけ(概略)
文書仮説(JEDP)ヴェルハウゼン 1878五書はJ(ヤハウィスト)E(エロヒスト)D(申命記)P(祭司)の4資料の編集。前9〜前5世紀かつての標準。修正形で現在も有力
補足仮説ファン・セータース 1975〜基本文書に後代が加筆。独立したE資料を否定現在の有力モデルの一つ
断片仮説レントルフ、ブルム 1977〜独立した小さな物語単位が後に編纂されたとくに欧州で有力
申命記史書仮説ノート 1943/クロス、スメントヨシュア〜列王は申命記の神学で貫かれた一続きの歴史書。二段階で編集修正形で広く受容
ペルシア時代編纂説フライ、ブレンキンソップ 1980年代〜トーラーの最終形はペルシア帝国下(前5世紀)。帝国の公認が関わった可能性議論継続
聖書ミニマリズムトンプソン、レムケ、デイヴィス 1990年代大半の文書はペルシア〜ヘレニズム期の産物。歴史的価値は最小少数派
伝統的著者説・早期年代説ユダヤ教・キリスト教の伝統、保守的学者、J.A.T.ロビンソン 1976五書はモーセ(前15〜13世紀)、新約は使徒本人。ロビンソン『新約聖書の年代を改める』は全新約を70年以前とする学界では少数派。信仰共同体では広く保持
△ 「定説」は動きます。上の範囲は2026年時点の主流であり、1970年や2050年の表は違うものになる。ここにある年代はすべて「提唱者のいる主張」であって、事実ではありません。

日本語訳の系譜と、このコーパスに入っているもの日本語訳 / コーパス

日本語訳のうち全文を保存・引用できるかは著作権の保護期間(団体名義は公表後70年、著作権法53条)で決まります。パブリックドメインは2つだけ。

訳公表権利コーパス備考
文語訳(明治元訳/大正改訳)1887 / 1917パブリックドメイン✓ 66/66巻・31,099節CrossWire Sword モジュール JapBungo(1953/1950年版)
口語訳1954 / 1955保護期間終了(日本聖書協会が明言)。著作者人格権は存続=改変不可✓ 66/66巻・31,084節JapKougo(1954/1955年版)。18章を別ソースで補完し節単位で突合
新改訳(1970/第三版/2017)1970–2017保護期間内✕ 収録しない章節番号の案内のみ
新共同訳1987保護期間内✕ 収録しない続編を含む(同じく保護期間内)
聖書協会共同訳2018保護期間内✕ 収録しない
続編(第二正典・外典)—日本語のPD版は存在しない✓ ラテン語(ウルガタ・PD)・英語(欽定訳1769・GPL)・ギリシャ語(七十人訳・非商用限定)24文書。各ファイルにどの伝統が正典とするかを記録
✓ 本ページの引用はすべてパブリックドメインの本文(口語訳・文語訳・欽定訳)から。保護期間内の訳は一切転載していません。

世界宣教と聖書翻訳の歴史アレクサンドリアから7,000言語へ

聖書は最初から翻訳される本でした——初代教会は旧約をギリシャ語で読んでいた。数字はウィクリフ聖書翻訳協会(英国)の統計(2026年9月1日時点)、注記のあるものはウィクリフ・グローバル・アライアンス(2025年8月1日時点)。

世界の言語
7,394
手話言語約392を含む(アライアンス)
全聖書がある言語
807
新約のみ:1,844/部分訳:1,519
翻訳進行中
4,414
言語で翻訳作業中
未着手・優先度高
543
言語・約3,800万人
ビジョン2025以降
4,600超
1999年以降に翻訳が始動した言語(アライアンス)
✓ 世界人口の99%超が、使える言語で何らかの聖書にアクセスできる(アライアンス2025)。それでもウィクリフ英国は「5人に1人が母語の聖書をまだ待っている」と言う——「何らかの聖書」と「母語の全聖書」の差です。

節目——翻訳のたびに、言語・文字・読者が生まれた

翻訳史が語ること:聖書は神聖さを原典の言語に閉じ込めなかった。七十人訳以来、読む人の言葉へ移り続け——そのたびに文字(ゴート・アルメニア・スラヴ)が生まれ、文学(ドイツ語・英語)が生まれ、読める民が生まれた。宣教と翻訳は、同じ物語の二つの語り方。

別の読み方伝統によって中心はどこか

「一番大切なもの」は伝統によって答えが違います。上の四幕は私の読み。ここに主な別解を並べます。

1
律法と戒めを中心にユダヤ教はトーラーを中心に読み、他は注解と歴史と見る。ミカ書6:8「公義をおこない、いつくしみを愛し、へりくだって神と共に歩む」が一行要約として広く持たれる。
2
救済史・契約を中心に(本ページ)神が関係を回復する一つの物語で、イエスがその頂点。多くのキリスト教伝統に共通だが強調点は違う(カトリック:教会と秘跡/プロテスタント:信仰と恵み/正教会:神化)。
3
知恵と生き方を中心に箴言・ヨブ記・伝道の書・山上の説教を核と見る。歴史よりも「どう生きるか」。最大の戒め——神を愛し、隣人を愛せ(マタイ22:37–39)——がすべて、という読み。
△ これらは排他的ではなく、本ページはどれかが正しいと主張しません。自分の読みを明示し、根拠を見せるだけです。

用語・略語GLOSSARY

正典canon
共同体が聖書として認める書の一覧。もとは「物差し」の意。
第二正典/外典(続編)deuterocanon / apocrypha
ギリシャ語旧約にあってヘブライ語旧約にない書。カトリックは「第二正典」、プロテスタントは「外典」、日本語聖書では「続編」。
七十人訳LXX
旧約のギリシャ語訳(前3〜前2世紀)。LXX=70、七十人の翻訳者の伝説から。
ウルガタVulgate
ヒエロニムスのラテン語聖書(382〜405)。長くカトリック教会の公式本文。コーパスはクレメンス版(1592)。
マソラ本文MT
ヘブライ語の標準本文。中世の学者(マソラ学者)が母音記号を付した。
死海文書
1947年以降クムラン近くで発見された写本群。旧約の大半の最古の写しを含む。
契約covenant
神が自らを縛る約束。交渉による取引(contract)とは区別される。
律法・モーセ五書Torah
創世記〜申命記。
パブリックドメインPD
保護期間が切れ、誰でも複製できる状態。日本では著作者人格権(改変禁止)が残ることがある。
Swordモジュール
CrossWire Bible Society の聖書テキスト配布形式。各モジュールの .conf にライセンスが宣言される。
欽定訳KJV
1611年の英訳(本文は1769年版)。本ページの英語側の引用。
タナハTanakh
ユダヤ教の聖書。トーラー(律法)・ネビイーム(預言者)・ケトゥヴィーム(諸書)の頭文字。24巻で、内容は39巻の旧約と同じ。
メギロート(五つの巻物)
雅歌・ルツ記・哀歌・伝道の書・エステル記。五つの祭りで朗読される。
文書仮説JEDP
五書がJ・E・D・Pの4資料から編まれたとする学説。
申命記史書
ヨシュア〜列王を、申命記の神学で書かれた一続きの歴史書と見る呼び名。
聖書ミニマリズム
旧約の大半を後代の作とし、歴史資料としての価値を低く見る学派。
SIL
サマー・インスティテュート・オブ・リンギスティクス(1934)。ウィクリフ運動の言語学パートナー。
動的等価
ナイダの原則。原文の読者と同じ反応が起きるように訳す。
ビジョン2025
ウィクリフ運動が1999年に掲げた目標。2025年までに必要な全言語で翻訳に着手する。
WLC/ネストレ1904
ヘブライ語旧約の本文(レニングラード写本)と1904年のギリシャ語新約。密度チャートに使ったパブリックドメインの原典。